巡礼の装束

巡礼にはまず「かぶり笠」でありますが、「すげ笠」が通例であります。最近は檜笠もみられるようになりました。

これは雨露をしのぐことはもちろんですが、いわば天蓋でありまして、その笠の文字は左のようにするならわしです。

笈摺り(おいずり)

次に笈摺りです。これは笈(物入れの箱)を背負って着物の背が摺り破れぬように着物の上に着るもので、袖の無い陣羽織のようなものです。

右の図のように三幅仕立てにすることは背割れの無いように、また下摺れの少ないようにとのことであるが、これは仏教の三諦(空・仮・中)三観でもあり、三身(法・報・応)でもあり、また一光三尊(弥陀・観音・勢至)をかたどったことでもあります。

仕立ては、両親のある者は中央を白く、左右は紅、

片親のある者は中央を紅、左右を白、

両親共にない者は三幅とも白とする。

 

また笈摺りは礼拝の時の浄衣であり、法衣でもあります。これを着て各霊場のお手板(本尊の種子板とお札番号板)をいただいてきます。

なお、「同行○人」という句ですが、これは一人で回る場合は「二人」、二人で回る場合は「三人」というように一人ずつ増していきます。その理由は観音様の御手にすがって巡礼するのですから、観音様を同行のお一人とみなして加えることによります。

杖は執金剛神(仁王様)の持たれる金剛杖をかたどったもので、「金剛杖(こんごうじょう)」と称え、上の部分は角塔婆のようにしてありますが、これは五輪(地・水・火・風・空)を表したものです。

このような姿に身を固めることは平等の立場に立って、

そのままが即身成仏であるという天地間まったく自分と

一体冥合した観音様の姿でもある訳です。

納経のこと

巡礼には『般若心経』や『観音経』を33巻浄写して各霊場の宝前に奉納し、その受領証として御手板を受けるために半紙を閉じて持って周り、御法印を受けるのが礼であります。

右のような札を33枚作り、上部の穴に紐を通して首にかけて札所をめぐり、これを各札所に1枚ずつ納めてゆくので「札所」という言葉が生まれました。